○床暖暖房の原理と特徴・性質について説明しています

床暖房」の原理
 「床暖房」と呼ぶからにはどのような仕組であっても、それは遠赤外線効果を求めて考えられた暖房の方法です。
 これはきわめて古くからある体験に根差したもので、ローマ遺跡からも出土する古典的で素朴であるとともに、とても手堅い方法だといえます。
ところでこの素朴な原理も、いまさらながら物理的に考えると、一度は迷路に迷い込む性質を隠しています。
 「遠赤外線」とはつまり、「熱」が空中を飛んで移動するという現象です。「熱」がエネルギーの一つであると認識されてから百年以上経ちますが、
その性質は電気的に考えた方が分かり易くなります。
 現在のところ物理的な最小単位である「素粒子」が象徴的ですが、これがまた空中を飛ぶというか、宇宙を直線的に横断して移動する姿を想像すると、とりとめないながらロマンチックな思いを抱きます。いまだに太陽系から飛び出して外宇宙を飛行しているはずのアメリカのボイジャーに似て、「「素粒子」は無限に至ろうとする宇宙の旅人といった果てしない夢想を喚起します(ヒマなのは私だけ?)。
 この素粒子もまたエネルギーを持っていることからには、いずれは果ててどこかで消滅するだろうという、そんな地球的な時間観念も確かに生まれます。なのに「エネルギー不変の法則」というのがあります。宇宙を満たすエネルギーの総量は減衰することがなく、ただ姿や性質を変えるだけだという、この反地球的な真実。
 「使えば無くなる」といえば、お金でも資源でも地球ではそうです。化石燃料を消費すればいずれ無くなります。ただしそうなると二酸化酸素の排出もまたピタリと止む、と考えることもできます。危機が迫れば人間は真剣に考えます。「尻に火が付く」状態ですから。崖っぷちに立つ者は必至で考えます。いまの地球人はなお物欲絡みですが必死で考えています。確かに考えています。老いも若きも「アース・コンシャス(地球を意識する)」という次元で、シロクマの心配もしながら「明日は我が身か」と、少し怯えています。さっさと自然が多く残る地域に移住する人もいますが、地球規模の不安の枠からは出ることはできません。
 まして宇宙時代の無限の枠からはもはや、逃げるというより茫然自失の果てしない運命を前にした無力感とともに、一方で素直な受容態度もまた生まれようというものです。
 仏教めいていますが、「遠赤外線」の話です。この人為的にでも自然的にでも地球で発生した熱エネルギーはすべて、最後には宇宙空間へと飛び出してゆきます。
 「エネルギーと質量は同じもので、時間と空間もまた不可分の関係にある」という物理学者の確信の下に考えると、「ダークマター(暗黒物質)」と恐ろしげな呼び名を付けられた未知の星間物質は、こうした言葉として物質とは呼べない熱エネルギーなど留まることなく運動するあらゆる電磁波の総体を含みます。
 光もまた電磁波で、夜空を飾る無数の恒星の瞬きもまた、宇宙空間を満たすエネルギーの一部です。「真空」こそが夢想の産物で、きわめてゆるいながら星間はけっこう渋谷のハチ公前の交差点に似たにぎやかさです。「ギャラクシー(銀河)」という言葉には確か、「美しく着飾った人々の群れ」という意味があります。
 かなり大げさな感じの話になりましたが、「遠赤外線」はそのような性質をもったエネルギー自体です。このことが重要な意味を持ちます。この「遠赤外線」が熱として我々に感じられるように、この電磁波は他の物質に衝突すると熱に化け、ただし電磁気的な性質から電導体に対しては全反射する(熱に化けない)という特長があります。レーザーでは鏡を切れない、というのと同じ性質です。
遠赤外線効果 「熱」を帯びた物体は赤外線を放ちます。床を暖めても同じ現象が起きます。人間の体温も同様に放出されますが、人体のまわりに冷たい「物」があると、この体温の放出速度は速まり、肌寒かったり、あるいは我慢できない寒さを感じることになります。その体温放出速度を直接に押さえ、自分の体温で暖まる、というのが「赤外線効果」です。空調機などで暖かい空気で身体を包む、というのとは違います。もっと直接的です。
赤外線の特性 冷たい外気はガラス窓にさえぎられ、 部屋の中に直接には入ってきません。それでも暖房がなければ寒いのが道理。ところが太陽の光は、ガラス窓を透過して入ってきます。それでネコなら満足。この太陽の光には、可視光線とともに「赤外線」が含まれていて、それが難なく透明なガラス板(絶縁体)を通過し、ネコや床を暖めています。ここがポイント。ネコでも知ってるこの「赤外線効果」、それが居心地の良い空間(場所)を作ります。
物理的性質 赤外線の飛ぶ速度は光と同じで秒速約30万kmで、月まで約3分で往復できる速さ。可視光線がそうであるように赤外線もまた電磁波の一つです。周波数は8〜13μm。「μ」は1/100万という意味です。熱はエネルギーの一つですが、これが確定したのは約100年前。それまで熱は他の物体の運動の派生物で、あまり専門家にも意識されませんでした。が、分子レベルでの研究の結果として、熱が紛れもないエネルギーの一形態であることが判明しました。
ここで肝心なのが、「温度」と「熱量」の関係です。気象庁の気温発表と体感温度の差はよくいわれますが、理由はこうです。20℃で同じ1立方メートルの体積を持つ空気と水を比較すると、温度は同じでも熱の量(エネルギー量)はまったく違うということです。およそ1対1000になります。このとき空気は0.023kW相当の熱エネルギー量を持ち、水は23kW程度の熱エネルギー量を持っていることになります。これは誤差というより大きな隔たりであり、温度というものが仮の物差しであることが分かります。摂氏温度は日常では物差しとして便利ですが、暖房を考える上では決して無視できない異質さとなっています。

空気という温度によって膨張や収縮の激しい性質を持つ気体は制御が困難ですが、コンクリートなどを蓄熱体として暖房に利用した場合は、安定的でしかもより多くの熱エネルギーを蓄えられるため、よりロスの少ない、ほどよい放熱をつづける快適空間を維持しうる特徴を持っています。
「床暖房は部屋の空気を暖めない」と考えた方が理解は早くなります。
蓄熱式床暖房システムのプランニングではあくまで「遠赤外線効果」を狙います。これがポイントです。床下に蓄熱された熱エネルギーは周囲の温度の低い物の方へと移動します。その性質に従い、床面からは壁や天井、あるいはそこにいる人へと熱は遠赤外線の姿で移動します。さらに壁や天井は床面と同じ温度に近付きます。
床と壁や天井が近似した温度になると、そこに接している空気は伝熱作用で二次的に暖められます。遠赤外線(電磁波)は物として希薄な空気を通過してなかなか暖められません。しかし床・壁・天井に直接に接している空気は徐々に伝熱で暖められます。
床暖房環境では空気の対流が起こりにくいとされていますが、理由はこのためです。もしも床からのみ空気が暖められるなら、暖まって比重の軽くなった空気は上昇し、入れ替わりに冷たく重い空気が降りてくることになります。ですが実際には四方から伝熱により温められるので対流が起こりにくいことになります。
結果的に部屋の空気は暖まりますが、ここで暖房の熱源はやはり遠赤外線であり、空気温度は二次的に体温の保温に役立っています。もしもエアコンにより空気温度のみで暖房効果を得ようとすれば、空気温度は25℃は欲しいところですが、床暖房環境では20℃前後で快適な暖かさを得ることが出来ます。
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